大改造!!　劇的　ビフォーアフター 　匠百軒　2005 4  

物件96　気まずい家   　　

   家人も客も同じレベルで
　独立した時間を過ごす
　  大阪府大阪市Ｓ邸　＜２００５年１月３０日放送＞
       txt.Kimiko Sakaguchi        photo.Kunio Ohkoshi

大写真／落ち着いた色調でまとめられたダイニングでくつろぐＳさん夫妻(右）と匠の小川さん(左）。大容量の収納から引き出された格子が廊下との仕切りに。左奥は娘さん２人の部屋。
小写真／ＪＲ東西線が脇を走る、車の通りがはげしい道路に面して「シュ・ヴゥ」は建つ。リフォームを終えた真っ白な外壁とガラス張りのファサードが、古い街並みの中でひときわ目立つ。

　「思い描いていた以上の出来栄えでした。これからは生活感が出ないようにがんばりたい、その努力のしがいのある建物をつくってもらいました」と語るのは、０４年、匠の洗礼を受けた理髪店「シュ・ヴゥ」のご主人、Ｓさん（３９歳）。８年前にお父さんの跡目を継ぐために、妻（３４歳）、娘さんとともに入居し、現在は移り住んでから生まれたもうひとりの娘さんと４人で暮らしている。

「父が始めた店ですが、築６０年経って老朽化が進み、梁はもうその役目を果たしていない、と母から聞かされていました」
木造２階建ての店舗兼住宅のＳ邸が建つのは、大阪城の北側、超高層ビル郡を背景に、京阪本線とＪＲ東西線が交差する、喧しい街中の古い住宅街。一見したところ、さほどの傷みはなかったが、建てられたのは終戦直後の物資の乏しい時代であり、改築をたび重ねて2軒をひとつの住戸にしたこともあって、骨組みとなる構造は瀕死の状態であった。また、その時々に必要に迫られて寸焼き場的に手を入れたのも弊害を生んだ。生活エリアと営業エリアの区別のない、交錯した動線ができあがり、家人と客がいやおうなしに顔をつき合わせてしまう「気まずい家」となってしまったのだ。

「お店を通らないと2階には上がれませんでした。しかも台所はお店の奥にあって2階とは通じていないし、浴室とトイレはその脇に。トイレはお客さんも使いますから、お互いに気まずい思いをしていました。娘2人が大きくなれば、その思いはいっそう強くなるのでは、と心配でした」と奥さんは振り返る。
　今回、匠としてこの建物にメスを入れたのは小川建築工房の小川一さん。若い頃に現場で監督をしていたとあって、机上にとどまらない懐の深さをもった実力者だ。
　
リフォームの基本骨子は生活と営業の動線を明確に分けることだった。1階は店舗をメインとして、住居用の玄関と浴室を付帯させ、2階はLDKと主寝室、子ども部屋、と完全にプライベートスペースに。

　

〜大改造!!劇的ビフォーアフター 　匠百軒から引用〜