NewHOUSE 2004 12  

 

  シンプルでありながら、遊び心あふれる仕掛けのある家     
   大阪府 Kさんのお宅・・・・・・・・・・file. 07                 
       延床面積/33坪  設計/小川建築工房  

 


 「できるだけものを隠してすっきりと暮らしたいけど、ちょっとした遊び心も利かせたい」という希望があったKさんのお宅。ご主人は店舗などの施工を指揮する現場監督なだけに、家づくりには人並み以上のこだわりがあった。
 共に20代の若いご夫妻だが、結婚後2年ほどの賃貸生活を経て「建てるのなら早い方がいい」と家づくりを決意。土地探しは奥様が、プランの構想はご主人が担当した。「インターネットで建築家の手掛けた家を調べ、 木の使い方がいいなぁと印象に残ったのが小川さんだった」とのこと。すぐに事務所を訪ね、その場で 依頼を決めた。「強い要望がある建て主だったからやりにくいかも」とご主人は話すが、「理解し合えるまでが早いので、それだけ話が深まる。意外性をどう表現するか、私もとても楽しめました」と小川さん。
 一見寡黙なようで、その奥には上質なユーモアが潜む。そんなK邸に付けられたテーマは「忍者の家」。開口部が少なく、どこから入るのかパッと見てわかりにくい外観も、建主と建築家が企んだ計算である。玄関に見られる把手のない扉デザインの手法は家全体に採用され、「壁なのか、扉なのか?」と訪れた人を一瞬煙に巻く楽しい効果が。
 リビングにも一見だけでは用途がわからないものがある。2階のスノコ状の通路が現しにされていて、見上げると通る人の足だけが見える独特の眺め。その突き当たりの小窓から落ちてくる光と共に、リビング空間におもしろい表情をつくる。2階にはご主人の希望でロフトを設置した。忍者屋敷のような回転扉の奥に納戸があり、その上部に勾配屋根の頂上にあたる「篭り部屋」が隠される。ハシゴや収納家具をつたい上る、ローテク感覚が楽しい。K邸の魅力は、生活動線はしっかり考慮しつつも、空間自体は合理性のみを追求していないこと。暮らしを楽しみたいというご夫妻の柔軟な姿勢が隅々まで反映されている。

右ページ写真 :右上:玄関脇には靴やアウトドア用品が収まる納戸で、扉を閉めると玄関をいつも
              すっきりと保てる。
          :左上:焼板風の外観に溶け込んだ中央の開口が玄関。アプローチやデッキも格子で隠し、
                              まさに忍者屋敷風。
                    :中央:敷地は路面から2mほど高くなっている。
         :右下:スノコ状の2階通路。突き当たりの小窓はお城で弓などを射る狭間の趣で、
             外観にも個性を添える(玄関側・上部左手の小窓)。
左ページ写真 :2階通路の下部を覗かせる案は、「大きな拭き抜け空間は落ち着かない」というご主人の
         意向から。リビングの天井高は3mで、低すぎず高すぎず安心感がある。
 


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〜NewHOUSE 2004 12月号から引用〜

 

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