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現場打合せの帰り、ぶらりと鶴橋市場に足を向けてみた。
ここ鶴橋市場は天王寺・東成・生野の3区にまたがる甲子園球場２個分の広さがある市場で、店舗数は約８００。焼肉屋、韓国食品店、ブティックは言うに及ばず、鮮魚、乾物、日用品まで揃うありとあらゆる専門店が集まる。
工務店に勤務していたとき、そんな一角で、卸売市場で働く人たち相手に菓子パンや湯せんで温めた牛乳を売る小さな店を経営するＴさんの住居兼店舗を手がけた。手がけた、と言っても、小さなプレハブハウスをポンと置いただけなのだが。
Ｔさんの住宅引渡し後、程なくして、私は工務店を退職し、独立することになり、その報告にＴさんのところを訪ねた。
私は、ほんの挨拶のつもりだったのだが、Ｔさんは私が仕事を貰いに営業に来たと勘違いしたらしく、店の品物を置く台を発注してくれた。
今思えば、渡した名刺に「建築工房」とあるので、なにか木工の仕事でも始めたのだと思われたのかもしれない。若造の独立祝いに、と無理やり仕事をくれたのだろう。
そんな勘違いには気づかず、私は「はいはい、何でもやりますよー」と言ってありがたくその仕事を頂戴し格安で台を作らせてもらった。Ｔさんの店の菓子パン陳列台が私の独立後の処女作となったわけである。
当時Ｔさんは80歳をとうに超えていたから、今はお元気なら90代？
まだご存命なのだろうか．．．すこしどきどきしながら商店街を歩く。
懐かしい風景ではあるが昨今の韓流ブームの影響か、観光客向け？のような小洒落た店もあり、独立当時とは大分様変わりしている。 |
