2006.9.14

座右の書

 

 


「建築は詩」建築家吉村順三のことば100

         (四六判/130頁/1,680円/彰国社)

 



吉村順三が好きである。

本書は吉村氏のことばを,存命中に活字となった新聞,雑誌,書籍などから選び、まとめた語録集。
2005年の吉村順三建築展開催に合わせて刊行されたものである。

吉村さんは大変寡黙で控えめな方だったらしく、自らの建築思想や設計方法を文章にすることは少なくて、この本にも

「建築家たるものこうあるべきだ!」
という精神論や
「設計とは!デザインとは!!」
なんて直接的な話は一切ないのだけれど、つづられた平易で短い言葉の中に建築に対する誠実な信念がそこはかとなく見え隠れして、それが押し付けがましくなく気持ちの 中にすっと入ってくる感じがする。

デスクの傍らに置いて、仕事の合間に折に触れてふっとページをめくると勇気づけられたり、戒められたり。
まさに「座右の書」というべき一冊である。

編集者の意図としては建築を志す若い人に向けたメッセージのようだが、建築に携わる人ならずともぜひお勧めしたい一冊である。

  
 
随所にちりばめられたスケッチがほっとする。